第3回 「調律師の仕事」
調律師がどのような仕事をしていて、それが演奏にどのように影響するのか、
実際の作業を見ながら、解説していただきました。
工程の一つひとつがそれぞれ大きく演奏に関係していることを知り、
本当に絶妙なバランスの上に「良い音」が成り立っているのだということを、
参加者全員、身をもって知ることができました。
「調整によって演奏を良くするためにできること」が、数え切れないほど、それこそ無限と言ってもいいほどあることを知りました。調律師は、単に楽器を良い状態に仕上げるだけではなく、それを演奏する人や会場の状態、温度・湿度などの環境、等々、あらゆる要素を考えた上で、「その時、その場での良い音」を追求するのだということがよく分かりました。三矢さんがこの講座を通じて何度も仰っていることに、『絶対的な良い音というものはありません』という言葉があります。優劣ではなく、違いなのです。様々な「違い」を深く細かく感じることがとても大切なことなのです。
受講者の声
新屋賀子(作曲家/ピアニスト)
技術、知識的な面から、感性の計り知れない奥深さ、目の前にあるものと対話するということ、美というもののありかたについて、人の手の、果てしない叡智について… 果てしなく広がっていく世界を感じる講座でした。
ピアノは、他の楽器と違って、自分のものを運んで演奏するということはできないけれど、だからこそ一期一会の、一台一台のピアノとの出会いは人との出会いととても似ている、と思うことがあって、どう向き合って、対話するのかということを、もっともっと繊細に、敏感に感性を磨きたいと思えたことが一番の収穫でした。
自分の感性が深まれば、お互いの好きなところをもっと見つけて、出会いの中で、もっともっと豊かな経験を深めていくことができる気がします。
そこに、感性、あいまいな感覚だけではなく、 調律という具体的な技術を通してアプローチすることで とても納得ができる形で分かるのだ、ということを教えていただいた気がしました。
講座のあと、ピアノだけにとどまらず、他の造形物に対しても それぞれがどんなふうに作られ、 どんなエネルギーをやどしていてどんなふうに扱ってほしいと思っているのだろう… 調和の世界、宇宙の本来の姿… そんなところまで、イメージが広がっていきます。
終わったあとに話してくださった 「美しい姿をしたピアノは、音も美しい」 というお話が一番示唆的だったと感じています。
「真実は、細やかな心配りを通して現実世界に実現される」 ということを、実際の技を通して感じさせていただいた講座でした。
(他の方とも一緒に) 食いついて質問シャワーを浴びせてしまったにも関わらず どの質問にも丁寧に惜しみなく答えていただき、 これ以上ないくらい学ばせていただきました。
素晴らしい講座を開いてくださって、本当にありがとうございました。