作品としてのプログラム

2019年3月4日(月)

みなさんは 『プログラム』と聞いて何を指していると思われますか?

「今日のプログラムは ロシアの作品が中心だったね」
と言われれば その日に演奏した曲目を指しているでしょう。

「あ、プログラム、もらい忘れちゃった」
と言われれば 紙モノとしてのプログラムを指しているでしょう。

今回 ご紹介しているのは後者の方、紙モノのプログラムについてです。
私は 音の葉を始める時からずっとこの紙モノのプログラムを 『作品としてのプログラムにできないものか』と思ってきました。
会場に入るときに渡されるプログラム、これがはっとするような素敵なデザインだったら 私はしばらく眺めて、手触りを楽しんで、できるだけ折り目がつかないようにそっと触って、大事に持ち帰り、時々それを取り出しては その日に演奏された曲を思い出すでしょう。

そんなプログラムは作れないものか。ずっとそう思ってきました。

ある日突然、その夢は叶いました。
昨年12月の音の葉が終わった直後に グラフィックデザイナー 進藤一茂さんから
「次回のプログラムは ボクに作らせてもらえないか」
そう言われたのです。
そう言われて 迷う理由はどこにもありません。
斯くして2019年1月の音の葉から お渡しするプログラムは 進藤さんのデザインによるものになりました。

今回はその第2弾でした。
そのプログラムはなんと『箱』でした。
『箱』の中には ピースになった曲が1枚ずつ入っていました。

今日はその『箱』の方について 進藤さんからのメッセージをお届けします。
↓↓↓

あるひとつの現象や、ひとりの人間、ひとつの曲、そういった「ひとつのもの」の中には、さまざまな要素が混在しています。一見とても明るい雰囲気を感じたとしても、その端っこに、その裏側に、暗い何かが含まれている。
 
それらは、必ずしもハッキリと区別されているのではなく、明るさの中に暗さがあったり、明るさと暗さがにじんでいたりして、すべてのものはとても複雑に存在しています。
 
プログラムを入れる箱のフタは、夜明けをイメージしています。
 
デザインのイメージを膨らませるために今回の演奏プログラムの音源を聴いてみたときに、僕は「夜明け」の気分を感じました。特に根拠はありません。曲のムードから直感的に降りてきたのです。
 
夜明けの時間は、実にぼんやりと、じんわりと、夜から朝に変わっていきます。その境目はあいまいで、朝と夜ははっきりと区別されているわけではありません。
 
「夜明け」というひとつのイメージがあるにもかかわらず、そこには様々な顔があり、移り変わりの曖昧さをもっている。そういうところが、今回のデザインのもうひとつのテーマである「多面性とあいまいさ」にとても合っていると思いました。
 
箱の内側も、そのように考えました。上ぶたの裏側は暗い茶色に黒の文字が印刷されています。身の内側は鮮やかな黄色にして、暗い茶との対比を大きくしました。箱の中身を、例えば人間の内面と考えたときに、二面性のようなものとして捉えられるようにしました。

進藤一茂
グラフィックデザイナー

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