プログラムという作品 VOL.2 Kazushige Shindo

2019年3月4日(月)

2019年 2月の音の葉でお渡しした紙モノのプログラムは 『箱』でした。

当日 演奏する曲名を書いてある紙が 1曲につき1枚ずつピースになって入っており、蓋を開けて ご覧いただくようになっていました。

グラフィックデザイナー 進藤一茂さんから メッセージを預かりました。
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今回の演奏プログラムを尋ねたときにフルートの下払桐子さんがこんな話をしてくれました。

「まだ学生のころ、自宅で母に『次は何を吹いてほしい?』と聞いて、リクエストされた曲を次々に吹いていきました。そんな風に、“次に何が出てくるか分からない”というコンサートをいつかやりたいなあと思っています。お客さんが、次の曲は何かなとワクワクしてくれるような、そんなコンサートです」
 
それを聞いて僕は、このプログラムの形を思いつきました。
 
一般的なコンサートのプログラムは、演奏曲の一覧がひとつのページに書いてあります。それはコンサート全体を俯瞰で眺めることができて、道筋を想像できます。
 
今回のプログラムでは、曲の一覧を作らずに、タイトルを一曲ずつバラバラのピースに印刷しました。俯瞰の目をなるべく持たずにそれぞれの曲の世界に入り込んで、コンサートをより「その場の体験」として感じてもらえるようなものにしたいと思ったのです。冒頭の下払さんの言葉のような、演奏する人の感覚を、プログラムでも表現できればと考えました。
 
そうしてできたひとつひとつのピースには、それぞれ独自の世界があります。それでもやっぱりコンサートはひとつのパッケージです。そこで、それらをまとまりのあるものとして綴じるのに、僕は箱を選びました。
 
僕にとって箱とは「大切なものをしまっておくもの」というイメージがあります。
 
演奏者の血となり肉となり、もっと言えば魂の一部となっているたくさんのピースの中から、今日のためにじっくりと選ばれたいくつかの曲を、大切にしまっておくための箱。大事な宝物を部屋に広げて、そうしてまた戻しておくような。

進藤一茂
グラフィックデザイナー

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