ある日 誕生日プレゼントを届けに。

2019年2月25日(月)

先日、Mちゃんの18歳のお誕生日と高校卒業記念を兼ねて ご自宅に生演奏をお届けに伺った。

Mちゃんは 生まれつき障がいがあって、言葉を話すことはできない。
座ることもできない。寝返りをうつこともできない。食事も固形物は難しいので、ペーストにしたものを ゆっくりスプーンで食べさせてもらう。そして 胃に穴を開けて そこにチューブを通して 栄養を流し込む「胃ろう」もしている。お風呂には ヘルパーさんが来て 入れてもらう。学校へは 車椅子に乗って お母さんやお父さんが送迎なさっている。

しかしだ。
何にもできないんじゃない。
Mちゃんは 言葉なんか使わなくても 話せる。
目は口ほどに物を言う、とよくいうが、それどころじゃないくらい目は
キラキラしていて、言葉以上の話をする。顔全体を使って 表情で話をする。
Mちゃんと目を合わせていると なんだか全部通じているって わかるからすごい。
そして 嫌なことがあったり、悲しいことがあったら、たちまち顔全体で
表現する。
ボロボロ涙を流す。
もうそれは ジェットコースターに乗ったみたいに コロコロと表情が変わるのだ。

私たちはどうだろう。
嬉しいことがあった時、素直に笑顔で 嬉しい!という表情をしているだろうか。
悲しいことがあった時、ひとしずくの涙を流しているだろうか。
怒りを感じた時、「それは 嫌です!」ときっぱり心の中でも宣言しているだろうか。
楽しい時、時間を忘れて 没頭しているだろうか。

褒められても「いえいえ、そんなことないです」なんて言ってないだろうか。悲しくても「ちっとも悲しくないです、大丈夫です」って言ってないだろうか。
怒りを感じた時も すっと通りすぎてないだろうか。
楽しい時も 「今は 遊んでちゃいけない」と別のことをしようとしていないだろうか。

私は Mちゃんに逢うたびに
「あなたは あなたとして生きていますか」と問われているように感じる。
だから 私はいつも Mちゃんに ちゃんと逢える自分でいたい、と思う。
Mちゃんのお宅に 音楽を届けるたびに「今年は大丈夫だろうか」と思う。
実際に逢ってMちゃんが ニコッと笑ってくれたら 私は心からホッとする。
そして 「ありがとう」とお礼を伝える。

Mちゃんが生まれた時、障がいがあることを お母さんは なかなか受け入れられなかった、と仰る。
Mちゃんが生まれてからというもの、毎日毎日 Mちゃんのそばから離れず、朝も昼も夜もお世話なさっている。そして夜中も数時間おきに体位を変える。
まさに24時間 365日 お世話し続けておられる。
Mちゃんの18歳のお誕生日は ご両親が 1日1日 片時も休むことなく過ごしていらした18年間でもあるのだ。

お父さんも会社から早く帰ってきて、お母さんの負担を少しでも減らそうと Mちゃんのお世話を喜んでなさり、「ご飯を上手に食べさせることができるのはパパちゃんです」とご自分で仰る。そんなお父さんをMちゃんは 大好きだ。
お父さんがいなくても、お母さんがいなくても Mちゃんがいなくても 誰ひとり欠けても ダメなのだ。
家族3人がいつもしっかりタッグを組んでいないといけないのだ。

Mちゃんは ご両親が一生懸命 付き添ってくれているのをよくわかっている。
言語ではなく、非言語でコミュニケーションができるすごい家族なのだ。
そんなご家族のところへ 私はもう何年も伺わせていただいている。
これを感謝と言わずしてなんと言おうか。

今年のお誕生日のプレゼントも 音の葉のコンサートを選んでくださった。
楽器を取り出して、音を出し始めると Mちゃんは これから始まることをすでにわかっていて、顔の表情いっぱいに喜びを表現してくれる。
コンサートの間中、Mちゃんは にこにこして 足でリズムまで取り始める。

障がいってなんなんだ。
違う、これは 完全に 才能だ!
私は そう思う。

 Mちゃんは どう生きるかということを教えてくれる師匠だと私は信じて疑わない。

また来年もMちゃんのお誕生日にお逢いしたい。
そして その次の年には 20歳のお祝いを盛大にしたいというご希望をしっかり叶えたいと 強く思っている。


✴︎音の葉は ご希望の場所へ 生演奏をお届けしています。
詳細は 音の葉のホームページ、お問い合わせフォームから ご連絡ください。
その際は 必ず ご連絡先のアドレス、お電話番号をご明記ください。

 

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